モダンガールと人種の仮面劇

アリス・E・ワインバウム(ワシントン大学)

 1910〜20年代のアメリカでは、仮面や仮面劇をめぐるイメージ、概念、そして主題は、映画、広告、小説、社会科学、心理分析などのさまざまな領域で普及するようになっていた。本報告では、こうした表象の爆発的な増加と仮面劇の普及について考察し、これを新たな形態の近代的女性性と人種的アイデンティティーの出現と関連づける。本報告は、広告イメージの分析、人種研究に秀でたシカゴ学派の社会学者ロバート・エズラ・パークや、フェミニスト精神分析者のジョアン・リビエールの著作の検討を通じて、仮面劇という観念が、いかに人種化された比喩として登場したかを明らかにする。仮面をつけることは、単にジェンダー・アイデンティティを身に纏い、演じるだけではなく、ジェンダー化された自己を人種化するものであった。

 ハーレム・ルネサンスの作家、ネラ・ラーセンはその著作を通じて、人種の仮面劇における権力の問題に注目した。特に、アフリカ系アメリカ人女性――当時、彼女らは「時代遅れ」で「原始的」で「前近代的」と見なされていた――の「近代性」を確保するためのメカニズムとして、これを用いることの諸問題について考察した。本報告では、彼女の小説『流砂(Quicksand)』を参照しながら、支配的な人種的編成を構築/脱構築する仮面劇の権力性を検討する。本報告の全体を貫く論点は、アメリカにおける近代的な女性性が、ジェンダーと人種的アイデンティティーの双方がせめぎ合う一種の仮面劇として出現したというものである。そして、仮面、仮面劇、衣装のパフォーマンスが、モダンガールの近代性を構築するにあたって、いかに中心的な役割を果たしたかを明らかにしていく。というのも、アメリカのモダンガールにとって、近代性の究極的な指標は、仮面劇をコントロールし、人種的な「他者」として自らを演じる能力にあったからである。