ジェンダー研究の国際的拠点 - お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター
 

共同研究

「DVの視点による家族法理論の再検討」

【期 間】 2010(平成22)年度
【研究担当】

戒能民江(本学副学長・教授)

【内 容】 近年、離婚紛争における子どもの福祉保障をめざして、面接交渉権や共同親権の法制化およびハーグ条約の批准が主張されている。離婚紛争の多くはDV事例であるが、これらの議論においてDV要因が十分考慮されているとは言い難い。本研究では、諸外国の立法例や学説などを検討するとともに、DV被害当事者の経験を法学的に整理することで、家族法理論にDVなど家族における暴力という要因をどのように組み込むことができるのか、検討を行う。

「ジェンダー視点に立った予算分析の実践-業績評価からのアプローチ」<科学研究費補助金若手B研究>

【期 間】 2008(平成20)~2010(平成22)年度
【研究担当】

市井礼奈(IGS客員研究員、南オーストラリア大学ワークライフバランス研究所 研究員)

【内 容】 本年度はジェンダー視点に立った予算運営について特に韓国と日本のアプローチや実施方法を比較する。韓国では2010年度に初めて、ジェンダー予算声明が発行された。この予算声明を分析してジェンダー予算のフレームワークや実施手法を研究する。日本では、ジェンダー予算のパイロットスタディーの実施が計画されている。既存の男女共同参画関連予算の拡充や監視・影響調査の活用など、日本の予算制度に適合したジェンダー予算のあり方などを検討したい。最後に両国の取組や予算制度を比較し、政策インプリケーションを示したい。

「工学教育とジェンダー」

【期 間】 2007(平成19)~2010(平成22年)年度
【研究担当】

高橋さきの(東京農工大学・本学非常勤講師)

【内 容】 ジェンダー論の授業に具体的に組み込むことのできる工学関連の題材について検討する。工学全体を見渡せるような基本的な題材であって、しかもジェンダー視点が存在することによって事態が鮮明となるような題材をピックアップし、どう伝えていくかについて考える。科学/技術/科学技術を外在的に扱うのではなく、内部の目と外部の目を同時に持ちうるようなアプローチによる事象の把握をこころがけ、また、広く生産の現場を対象として考察する。2007~08年度は、日本の近代産業黎明期の繊維産業分野を主に対象とし、09年度は、日本の重工業の立ち上がりの時期や、現代完成期に入りつつあるウェブ社会におけるジェンダー秩序についても考察対象とした。今年度も、対象時期を広げつつ、ひきつづき考察を行う。 こうした題材の蓄積は、労働現場において身体を媒介として性・セクシュアリティ観が構成される過程を考察するうえでの基礎資料ともなりうるものである。

「スペインにおける女性の移民とジェンダー」

【期 間】 2010(平成22)年度
【研究担当】

磯山久美子(法政大学ほか非常勤講師)

【内 容】 昨年度は、モロッコやエクアドルをはじめとして増加し続ける移民の女性の出産がどのようにスペインの少子化に影響を及ぼしているかを考察しようとした。このテーマに引き続き、今年度はその背景にある移民の女性をめぐるスペイン社会のジェンダーについて労働と家族を中心に考察し、女性労働における移民女性の位置とその家族のありようを考察する。

「女性と選挙」

【期 間】 2008年(平成20)年度~2010(平成22)年度
【研究担当】

大海篤子(東京都市大学非常勤講師)

【内 容】 1.東京都内23区区議会議員調査(2010年5月より実施)。本調査では、比較的女性が多い、東京都23区の区議会議員を対象に、初当選における選挙資源に注目して調査を行い、選挙資源における男女格差を明らかにする。特に、家族要因を問う調査票を用意して、女性が議員になるときに家族は障害なのか、資源なのかを明らかにすることが特徴である。
2.2010年9月2日から開催されるアメリカ政治学会において、女性国会議員(参議院中心)の選挙分析を発表する。すでに蓄積してきた資料と2009年以降の民主党の参議院選挙戦略を検討する。また、JAWSによる成果として、アメリカ政治学会へ若手研究者の参加増が可能になった。
3.「女性と選挙」に関する女性研究者が集まり、新たな研究を展開する。具体的な構想は未定であるが、個人的には、過去に蓄積してきた資料を公開できる方法を模索している。(参考:『ジェンダーで学ぶ政治・社会学入門―男女平等の未来のために』世織書房を出版。4月)。

「英国の日本人コミュニティの歴史」

【期 間】 2008(平成20)~2010(平成22)年度
【研究担当】

酒井順子(フェリス女学院大学ほか非常勤講師)

【内 容】 本年度は、これまでの著作Japanese Bankers in the City of London: Language, Culture and Identity in the Japanese Diaspora (Routledge)や論考、日本においてのオーラル・ヒストリーの方法、ジェンダー史の方法についての検討をもとに、オーラル・ヒストリーの在り方についてまとめる計画でいる。イギリスに渡った日本人、特に女性たちが二つの国の間で自己アイデンティティの調整をしたように、彼女たちにインタビューをしてきた自分自身も複数の価値観の間で自己の表出の仕方を調整しなければならなかった。そうした自分のアイデンティティと彼女たち、彼らのアイデンティティの重なりあい、解決できない違和感を組みこんで、これまでのインタビューを叙述し、同時に国境を越えた研究の可能性を追求したい。

「明治後期における女性の文化活動および長谷川時雨に関する研究」

【期 間】 2010(平成22)年度
【研究担当】

マーラ・パテッシオ(英国マンチェスター大学講師)

【内 容】 今年度は以下2つのテーマに取り組む予定である。
(1)明治後期の女性たちがジャーナリズム、文壇、国粋主義的事業への貢献を通じて、どのように女性文化を創出しようとしていたのかをとらえる。
(2)明治期から昭和初期の女性文化の形成およびその明確化の過程において、長谷川時雨が果たした役割について検討する。
ともに英語圏では先行研究がなく、日本語文献でも限定的にしか考察がおこなわれていないテーマであるが、日本史におけるジェンダーの問題を理解する上で重要な課題として認識している。

「フィリピン・ネグロス島における農村社会の変容とジェンダー」

【期 間】 2010(平成22)年度
【研究担当】

堀芳枝(恵泉女学園大学准教授)

【内 容】 フィリピンではスペイン植民地時代の遺産としての大土地所有制度が、現在も貧富の格差の大きな原因である。特にネグロス島は18世紀以来、砂糖のプランテーションの島として発展したため、大土地所有者―農業労働者という社会構造が確立し、それを突き崩す農地改革の実現が最も困難な島であるとされてきた。それでも、1988年に包括的農地改革法が制定され、1990年代には農業労働者たちがNGOの協力を得ながら政府と交渉し、農地を合法的に取得する運動が各地で起こり、2001年にはネグロス農地全体の約16%の農地改革が実現した。現在、農民は砂糖や野菜、家畜などの複合農業や、バナナや砂糖のフェアトレードを開始し自立を模索している。それまで主たる家計の担い手は男性であったが、女性も野菜を栽培・販売し、フェアトレード事業にも積極的に参加するなど、家庭や住民組織における女性の役割、男性とのパワーバランスも変化しつつある。本研究はこの点に着目し、ネグロス島の農村社会の変容の中でジェンダーがどのように変化し、女性がエンパワーメントしていったのかを分析し、フィリピン農民運動史に位置付けることを目的とする。

「フェミニスト経済学と社会運動」

【期 間】 2010(平成22)年度
【研究担当】

徳永理彩(都留文科大学非常勤講師)

【内 容】 フェミニスト経済学における主題である資本主義と女性の排除/包摂の問題への接近として、Massimo De Angelisの ” The Beginning of the History”におけるエンクロージャー、コモンズ、ポスト資本主義の議論を検討する。De Angelisの議論の検討を通じて、フェミニスト経済学の理論的潮流との接点ならびに、社会運動への含意を明らかにする。

このページのトップにもどる


 

お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1 Tel. 03-5978-5846 Fax. 03-5978-5845