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2006/7/21-22-23 韓・日女性たちの歴史文化紀行




韓・日女性たちの歴史文化紀行

お茶の水女子大学大学院 博士後期課程小畑文

【日 時】 2006年7月21-23日
【企 画】 梨花女子大学・プロジェクトD
【参加人数】日本側23 名、韓国側15 名

 「韓・日女性たちの歴史文化紀行」は、歴史的に分断され国民国家の枠組みのなかで互いに「他者」として位置づけられてきた韓日女性たちによる文化レベルでの交流を目的とし、時代に翻弄された代表的な韓国女性ゆかりの地を訪れることで、今後の韓日女性たちのより深い相互理解を目指した。
 初日には、現存の宮殿のなかで最も保存状態の良い昌徳宮チャンドックンを訪れ、2003年にソウル市長によって復元された清渓川チョンゲチョンを散策した。昌徳宮では、1997年にユネスコ世界文化遺産に登録された美しい外観の後庭を巡り、朝鮮時代の王室文化と規律によって細かく制限されていた女性の宮廷生活が紹介された。清渓川は美観を重視して復元された人工川であり、安全上の問題などで女性、障害者、老人を差別する「差別川」という別称があると説明された。この川の途上に展示された陵幸班次図壁画には、1795年の朝鮮王朝正祖の行列が描かれており、宮中文化の再考の一助となるだろう。
 二日目に訪れた修徳寺スドクサは、植民地時代に最も有名であった新女性の金一葉キムイルヨプが隠遁し羅寰烽ェ滞在していた寺である。羅寰烽ニ金一葉は共に日本へ留学した後に、韓国の女性解放運動を牽引していった人物である。梨花女子大学の格別の配慮によって女性僧侶から直接の説明を受けることができ、質疑応答の時間には、女の出家にまつわる状況を詳しく確認することができた。講堂では金恩實より二人の新女性としての活動の歩みが紹介され、その後境内を巡って二人の質素な隠遁生活を追体験した。また境内にある歓喜台の景定尼からは、金一葉に関して、実体験から語られる詳細な説明を聞くことができ、近代初期の女の心的内面にまで想像をはせ、現在までも続いている女たちの絆の一つの形を、寺という形式のなかで考察する契機を得た。
 最終日は、独立運動家の柳寛順と朝鮮王朝の明成皇后それぞれの生家と記念館を訪れた。柳寛順はアオネ独立運動(1919年)を起こし、18歳の若さで日帝の拷問により獄死したとされる人物である。明成皇后は大韓帝国(1897-1910年)建設の際に、日本の浪人に暗殺されたとされる人物である。見学した生家や記念館では、梨花女子大によってあらかじめ依頼されていた専門の研究員から、時代背景や現代的意味を詳細に聞くことができた。これらの記念館では、二人の女性が日帝支配の犠牲者として悲劇的に展示されており、このことから歴史的資料として女性がどのように展示・表象されるのかという問題が提起された。
 この紀行を通して、女性の視点から朝鮮王朝、植民地時代の歴史・文化を再考察する契機を得ることができ、また新女性や女性解放運動との関わりにおいては韓・日間の交流が大きな役割を果たしていたことを確認した。さらにこの紀行から得た情報や思索は、その翌日から始まったシンポジウムにおける活発な議論となって結実した。

 

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