ジェンダー研究の国際的拠点 - お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター
 

ミリヤナ・モロクワシチ=ミュラー

IGS外国人客員教授、フランス国立科学研究センター政治システム分析研究所上級研究員 兼 パリ第10大学(ナンテール校)大学院教授(※赴任時)
赴任期間:2001年4月-2001年9月

第9回IGS夜間セミナー

現代ヨーロッパにおける移動とジェンダー

期間

2001年5月16日、23日、6月6日、13日、20日

担当

ミリヤナ・モロクワシチ=ミュラー (IGS外国人客員教授、フランス国立科学研究センター政治システム分析研究所上級研究員 兼 パリ第10大学(ナンテール校)大学院教授 ※赴任時)

内容

お茶の水女子大学ジェンダー研究センターでは、2001年4月より2001年9月まで、フランス国立科学研究センター政治システム分析研究所上級研究員 兼 パリ第10大学(ナンテール校)大学院教授のミリヤナ・モロクワシチ先生(Prof. MIRJANA MOROKVASIC-M・LER)を当センター外国人客員教授としてお迎えすることになりました。モロクワシチ先生のご専門は、移動とジェンダー、およびヨーロッパにおける社会主義体制崩壊後の超国境的移動にかんする比較社会学的研究で、この領域で多くの論文、編著を公刊していらっしゃいます。 1972年、パリ第5大学より社会学博士号を取得。その後リール第3大学をへて、1979年よりフランス国立科学研究センター政治システム分析研究所に着任。1994年からは、パリ第10大学においても教授として研究・教育活動に従事されています。先生の教育・研究活動は、フランスを越え、ヨーロッパや北米にも及んでいます。 その最も革新的な試みは、2000年7月から10月までドイツ・ハノーバーで開催された国際女性大学(IFU)の設立・実施でしょう。 IFU設立以来、「移動」研究部門のカリキュラム作成チームの1人として、そして同研究部門統括責任者として、ヨーロッパで史上初の女性大学の運営に深く関わられた経験をお持ちです。また、国際移動研究の代表的学術雑誌の一つである International Migration Review が1984年に初めて「女性と移動」を特集した際、その編集責任者の任に当たられ、当時の国際移動と女性にかんする研究蓄積を眺望した巻頭論文を執筆なさいました。 当センターでは、モロクワシチ先生来日に伴い、「現代ヨーロッパにおける移動とジェンダー」のテーマのもとに、下記概要の要領で5月から6月にかけて夜間セミナーを開催いたします。ふるってご参加くださいますようお願い申し上げます。

  • * モロクワシチ先生の主な論文・編著作 *
  • 1984 "The Overview: Birds of Passage are Also Women,"International Migration Review 18(4).
  • 1987 Jugoslawische Frauen: Die Emigration -- und danach, Stroemfeld/Roter Stern.
  • 1993 Bridging States and Markets: International Migrations of the Early Nineties, Sigma. (Co-editor and Contributor)
  • 1993 "In and Out of the Labour Market: Immigrant and Minority Women in Europe,"New Community 19(3)
  • 1994 Wanderungsraum Europa. Menschen und Grenzen in Bewegung, Sigma. (Co-editor and Contributor)
  • 1996 Migrants. Les nouvelles mobilit en Europe, L'Harmattan. (Co-editor and Contributor)
  • 1999 "La mobilit transnationale comme ressource,"Culture et Conflicts, 33-34.
  • 2000 "Escaping Nationalism and Violence in Post-Yugoslav Space,"in R. Breckner, D. Kalekin-Fishman and L. Miethe eds., Biographies and Division of Europe, Leske + Budrich.

―セミナーを始めるにあたって―
ミリヤナ・モロクワシチ

現代の国際移動が「女性化した」と述べることは、いまや一般通念になった。多くの場合、こうした発言の根底には、女性が移動の流れに加わることがグローバル化に関連する「新しい」展開だとする考えがある。夜間セミナーでは、ヨーロッパの文脈を事例として取り上げるが、そこで明らかになるように、移動への女性の参加は新たな展開なのではなく、むしろ社会における女性の地位をめぐるフェミニストの問題提起やジェンダー研究によって、女性の移動についての言説や意識が変化してきたということを示しているにすぎない。セミナーでは、今日移動する女性と男性についての私たちの理解を決定的に形成してきた主要な時期や論点、概念化に焦点を当てたい。また、いくつかの重要な動きを取り上げて、時間と空間をつなぐ今日的な方法が、グローバル化過程に関連する新たな機会(あるいはその欠如)によって形づくられているということ、そしてそれがジェンダー化しているということを示す予定である。移動をジェンダーの視点で議論することは、同化や統合といった問題、および伝統-近代論争に新しい光を当てることにもなる。さらに、ジェンダーが移動の傾向にどういった形で影響するのか、そしてジェンダーが男女の移動経験やその結果をどのように規定するのかを探究するために、異なる移動パターンを分析する。本セミナーでは、私個人の研究および著作を含め、ヨーロッパにおける国際移動とジェンダーにかんする複数の文献を適宜取り上げていく。

第1回 5/16(水) 6:30-8:30p.m.
I. 移動研究とジェンダー研究をつなぐ ―両者の接点を求めて―

コメンテーター:石塚道子(本学) 司会:伊藤るり(本学)

移動研究の専門家と女性/ジェンダー研究の専門家たちは、ほとんど互いの研究領域を関連づけず、長い間別々の世界で研究を進めてきた。移動研究において、女性/ジェンダーの問題はどのように発展してきたか? 2つの研究領域を交流に導いたのは、どのような問題構制だろうか? 両者はどの点で依然として互いに距離を隔てているのだろうか?

第2回 5/23(水) 6:30-8:30p.m.
II. ゲスト・ワーカーから超国境的移動者へ ―1989年を分岐点として―

コメンテーター:小井土彰宏(一橋大学)司会:伊藤るり

ヨーロッパにおける1989年以前と以後の移動パターンを検討する。移動パターンは、「(還流的)労働力移動システム」とその後のゲスト・ワーカー定住から、ヨーロッパ再編に伴ってより多様化したモデルへ変化した。これらの移動パターンにおいて、男女はどのような役割を担っているか(あるいは担うと想定されているか)? 移民政策、そして移動パターン分析そのものの根底に根強くある、移動者のジェンダー化された表象とはどのようなものか?

第3回 6/6(水) 6:30-8:30p.m.
III. ヨーロッパ経済への「他者化された」女性の編入 ―衣服産業、家事代行業、性産業―

コメンテーター:足立眞理子(専修大学非常勤講師) 司会:伊藤るり ヨーロッパ経済への「他者化された」女性の編入を示す3つの典型的なセクター(衣服産業、家事代行業そして性産業)を取り上げる。これらに共通する「労働」の捉え方とはどのようなものか? 女性のジェンダー化され、人種化された表象は、女性のこれらのセクターへの編入にどう影響しているのか? 日本、およびアジア太平洋地域の状況と比較は可能か?

第4回 6/13(水) 6:30-8:30p.m.
IV. 女性移動者の抵抗戦略 ―サン・パピエ、自営業、通勤としての移動―

コメンテーター:稲葉奈々子(茨城大学) 司会:伊藤るり

移動過程と世帯内権力配分はどのように関連するか? 移動は平等の拡大をもたらすのか? 賃労働が移動する者、そして残留する者に与える影響とはいかなるものか? 女性たちが越境行為と同盟関係の構築をつうじて、どのように既存秩序に挑戦しているのかを考察する。具体的事例として、フランスにおけるサン・パピエ運動、自営業女性、旧社会主義圏ヨーロッパにおける近年の通勤としての移動を取り上げる。この点で日本とはどのような比較が可能か?

第5回 6/20(水) 6:30-8:30p.m.
V. 強制移動と移り変わるアイデンティティ
―ユーゴスラヴィアのバイナショナル・カップルをめぐって―

コメンテーター:竹中千春(明治学院大学) 司会:伊藤るり

マルチナショナルな国家の暴力的解体を経験したユーゴスラヴィアにおけるバイナショナル・カップル――かつては「ユーゴスラヴィア人アイデンティティの柱」とみなされ、戦時には暴力と迫害の主要な標的となった――を考察する。暴力のジェンダー化された側面、また、暴力と武力抗争を逃れるためのジェンダー化された戦略を考える。

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