ジェンダー研究の国際的拠点 - お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター
 

タニ・バーロウ

お茶の水女子大学ジェンダー研究センター外国人客員教授 米国・ワシントン大学教授 (※赴任時)
赴任期間:2000年10月-2001年3月

第8回IGS夜間セミナー

(インター)ナショナル・フェミニズムと中国

期間

2000年 11/8, 15, 22, 29ならびに12/6, 13の計6回、いずれも水曜18時半から20時半)

担当

タニ・バーロウ Tani E. Barlow(お茶の水女子大学ジェンダー研究センター外国人客員教授 米国・ワシントン大学教授)

内容

お茶の水女子大学ジェンダー研究センターでは、2000年10月より2001年3月まで、米国・ワシントン大学教授のタニ・バーロウ先生を当センター外国人客員教授としてお迎えすることになりました。

バーロウ先生のご専門は、近代中国におけるジェンダーの歴史、および東アジアの植民地的近代におけるジェンダーの比較研究で、この領域で多くの論文、編著を公刊していらっしゃいます。1985年、カリフォルニア大学デーヴィス校で中国の小説家、丁玲(Ding Ling)のフェミニズム思想とその小説に現れる女性の位置づけを考察した論文によってPh. D(歴史学)を取得、その後ミズーリ大学コロンビア校をへて、1994年よりワシントン大学歴史学部で女性学担当の教授として教鞭をとっていらっしゃいます。
また、東アジア、ならびにアジア系ディアスポラの文化と政治の諸問題をあつかう学術雑誌『ポジションズ』(Positions: East Asia Cultures Critique)の主任編集者としての活躍も知られています。

 当センターでは、バーロウ先生来日に伴い、「(インター)ナショナル・フェミニズムと中国」のテーマのもとに、下記概要の要領で11月から12月にかけて夜間セミナーを開催いたします。ふるってご参加くださいますようお願い申し上げます。

テーマと日程  タニ・バーロウ

 この夜間セミナーでは,私の既出の,あるいは近刊の論文や著作をもとに,一連の連動する問題を取り上げる。これらの問題は,個別具体的な複数のフェミニズム(feminisms)の歴史性とその普及をめぐって展開される。フェミニズムズの主体,フェミニズムズにおけるナショナリティーズとジェンダーズ(genders),フェミニズムズの知的起源,フェミニズムズの時期区分,及び私がフェミニズムのカテクレシス(catechresis)と呼んでいる諸問題を検討する。フェミニズムが新しい目的のもとに引き合いに出されるときには,いつもフェミニズムの歴史的枠組みを注意深く再構築する必要があるのではないか――この点が全セッションをつうじてのポイントとなる。このような終わることのない政治的脱構築の作業は,急速に展開する商業的資本主義が行う経済的グローバル化の現状と,フェミニズムズの啓蒙主義的企てのなかに歴史的にコード化され,いまなお存続している植民地主義や新植民地主義の重圧のもとでは,切迫した課題である。

バーロウ先生の主な論文, 編著作

1994 Gender Politics in Modern China: Writing and Feminism, DukeUniversity Press. (Editor, with introduction)
1994 "Protocols and Politics of funu (un) Making the National
Woman," in Chris Gilmartin, Gail Hershatter, Lisa Rofel and Tyrene White, ed., Engendering China: Women, Culture & the State, Harvard University Press.
1997 Formations of Colonial Modernity in East Asia, Duke University Press. (Editor and Contributor)
1997

"Woman at the Close of the Maoist Era in the Polemics of Li Xiaojiang and Her Associates," in Lisa Lowe and David Lloyd, eds., Worlds Aligned: The Politics of Culture in the Shadow of Capital, Duke University Press.
ほか多数

I. 2000年11月8日(水)
「西洋フェミニズム」はなぜ不適切な名称か?

【テキスト】"Spheres of Debt and Feminist Ghosts in Area Studies in China" (forthcoming, Traces ,岩波書店『トレーシズ』邦訳10月末刊行予定)
【基本的な問い】いわゆる「中国フェミニズム」の内部における,いわゆる「西洋フェミニズム」を含めて,ナショナルならびにインターナショナル・フェミニズムを巣くう想念上の,もしくはイデオロギー的諸要素とは何か?「西洋」が「非西洋」を前提とする概念であるとするなら,「フェミニズム」はどうして「西洋的」ありうるのか?
コメンテーター: 秋山洋子(駿河台大学)
司会: 竹村和子(本学)

II. 2000年11月15日(水)
非ナショナル(もしくは地域的)フェミニズムの主体とは何か?

【テキスト】"'green blade in the act of being grazed': Late Capital, Flexible Bodies, Critical Intelligibility" (differences 10:3, 1998 [2000])
【基本的な問い】ナショナルな,単線的なフェミニズム言説ではなく,ベンヤミンのいう「歴史的」なフェミニズム言説における「女(women)」という主体は何か?ブルジョワ的歴史記述の連続体を「破砕して」あかつきに出現する主体とは何か?「転移する女性(women in transition)」という主体のなかで機能している還元不可能な諸要素――個別的なものに還元できない諸要素――とは何か?ポスト毛沢東,氾アジア志向「中国」映画文化のなかでのジェンダー化された主体が,「転移する女性(women in transition)」であって,たんなる「国民」ではないことを示す。
コメンテーター: 小林富久子(早稲田大学) 
司会: 宮尾正樹(本学)/伊藤るり(本学)

III. 2000年11月22日(水)
女(Women)の歴史は,社会的出来事の残滓,流動する言語使用,政治的偶発性,ナショナリスト的で反植民地主義的な開発戦略のなかからいかにして引き出せるか?

【テキスト】"Theorizing Woman: Funu, Guojia, Jiating (Chinese Woman, Chinese State, Chinese Family) in Angela Zito and Tani Barlow, ed., Body, Subject and Power in China (Chicago: University of Chicago Press, 1994.
【基本的な問い】フェミニズムの主体は既存のマトリクスのなかでいかに「女」として理解されうるのか?また「女」という視点を利用できるなら,その条件とは何か?
コメンテーター: 岡真理(大阪女子大学,予定)
司会: 宮尾正樹(本学)

IV. 2000年11月29日(水)
植民地的近代という特定の歴史のなかで女の主体性や,市民性,優生学,人種改良,「セクシュアリティ」,人類学などが包含するインターナショナルな問題を,どう私たちは読むべきか?

【テキスト】"The question of 'women' in Chinese colonial modernity" (unpublished manuscript prepared in honor of Stanley Spector and delivered at Washington University, St. Louis, 2000.
【基本的な問い】植民地近代主義のフェミニズムにおける優生学や排他主義の起源は,ポスト植民地主義的フェミニズムの目標に照らしたとき,どのように捉えうるのか?植民地的近代のなかで性差という知が成立するためのイデオロギー的条件は何か?
コメンテーター:坂元ひろ子(一橋大学) 
司会:宮尾正樹(本学)

V. 2000年12月6日(水)
(ポスト)社会主義近代とは何か? またそれと「中国」フェミニズムとの関係は何か?

【テキスト】"Woman at the Close of the Maoist Era in the Polemics of Li Xiaojiang and her Associates," in Lowe and Lloyd, ed., The Politics of Culture in the Shadow of Capital (Durham: Duke University Press, 1997).
【基本的な問い】フェミニズムズとその他の現代の「文化ロジック」との関係はどのようなものか?フェミニズムズは,非フェミニスト思想やイデオロギーとどのような関係を結ぶのか?フェミニズムズの系譜のなかで時期区分はどのような働きをするのか?
コメンテーター: 江上幸子(フェリス女学院大学)
司会: 宮尾正樹(本学)

VI. 2000年12月13日(水)
普遍的な「ポスト西洋的」フェミニズムの歴史の記述はネーションから地域への移行(いわゆるグローバル化)のなかでどのような課題に直面しているのか?

【テキスト】"Zero Degree of History," forthcoming in Comparative Literature March 2001.
【基本的な問い】この文脈では「歴史的カテクレシス」という語をどのように用いることができるか?記述とそうではないものとの関係を考えるにあたって,この語は有用なのか?「零度の歴史(zero degree of history)」は,系譜的な思考をする場合にいかに有用か?ポスト冷戦時代の再地域化は,どのように地域研究を変容させ,その結果,他者に関する知のコードを変えていくのだろうか?
コメンテーター:竹村和子(本学)
司会: 舘かおる(本学)

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