ジェンダー研究の国際的拠点 - お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター
 

IGS通信2010

新任のアカデミック・アシスタントとして、平野恵子さんが着任しました。

3/7 新任のアカデミック・アシスタントとして、平野恵子さんが着任しました。 以下は自己紹介です。

「この度アカデミック・アシスタントとして着任いたしました平野恵子です。
これまで、インドネシアのジェンダーと開発政策、国際労働移動について研究してきました。
IGSでは、7月開催のUNDPセミナー、シンポジウム関連業務をおもに担当します。
どうぞよろしくお願いいたします。」

2011/4/5掲載

杉橋やよい特別講義「ジェンダー統計について」

杉橋やよい1/31(月)、金沢大学の杉橋やよい准教授によるジェンダー統計についての特別講義が開催された。受講生は、本年度のアジア工科大学との研究交流プログラム「タイで、開発とジェンダーを学ぼう」に参加する学生を中心とした博士前期課程開発・ジェンダー論コース院生。講義は、ジェンダー統計の基礎から統計データの扱い方の基本、GIIやGGGIなど現在の国内外のジェンダー統計動向にまで話が及ぶ、包括的な内容であった。
 統計は、様々な社会問題について、現状把握や原因分析、政策立案、政策評価等のための客観的根拠として多用されている。ジェンダー問題を扱う統計データは「ジェンダー統計」と呼ばれているが、その定義については専門家間でも認識の差がある。単にデータに男女別区分があるというだけで、それをジェンダー統計としてしまう例もあるが、望ましいジェンダー統計のあり方は、統計調査の理論的枠組みづくりから組織的準備、実施過程やデータの貯蔵にいたるすべての統計生産過程にジェンダー視点を取り入れることである。また、ジェンダー統計のユーザーには、一般市民、女性団体、といった非専門家も含まれていることを意識し、アクセスのしやすさ、わかりやすさが重要視されている。これは、統計学の中では画期的な取り組みであるといえる。
 ジェンダー統計が世界的に注目されるようになったのは、1975年の第1回世界女性会議からであり、1995年の第4回世界女性会議(北京)に向けて各国がジェンダー統計の活動を活発化してきた。その後、90年代後半から少し停滞を見せたが、2006年以降、国連と世界銀行を中心に、ジェンダー統計活動が再び活発化している。日本におけるジェンダー統計活動は、世界の主流と比べて遅れを見せており、2010年12月に決定した第3次男女共同参画基本計画においてようやくジェンダー統計の整備が必要であることがうたわれた。また、内閣府男女共同参画局と統計機関の連携は弱く、ジェンダー統計の整備・活用に向けて克服すべき課題は多い。  

《開催詳細》
【日時】2011年1月31日(月)10:30~12:15
【会場】お茶の水女子大学本館135号室カンファレンスルーム
【講師】杉橋やよい(金沢大学)「ジェンダー統計について:国内外の動向とジェンダー統合指標」
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
【参加者数】8名

2011/2/4掲載

IGS研究会「政治思想とフェミニズム理論の乖離と接近」

 1/28(月)、同志社大学大学院教授岡野八代氏を講師に迎え、研究会「政治思想とフェミニズム理論の乖離と接近」が開催された。近刊予定である博士論文を元にした岡野氏の報告は、リベラリズム理論の中心にある公私二元論が、実は社会的排除や不平等を算出するという矛盾を内包している点を批判し、これまで政治思想や理論の中心から疎外されてきた「家族」や「依存」、「ケアの倫理」というテーマに焦点をあて、フェミニズムの議論から社会を構想するという試みであった。既存の政治思想が自立した成人男性をモデルとした社会制度を構想し「依存」私的領域に属するものとして議論から排除してきたのに対し、岡野氏は、乳幼児のように生存の為には誰かに依存しなければならない存在を前提とする社会を構想し、「依存」への対応を母子間等の関係性に留めおかずに集合的責任として認識するという思考の転換を提案する。さらには、こうした思考の転換が、近代的な主権国家を超えた新しい共同性の産出に向かうものであるとも示唆している。

 岡野氏の報告に続き、会場に集まった経済学や社会学ほか学際的なバックグラウンドを持つ研究者からは、それぞれの領域における同様のテーマについての議論を踏まえた質疑や意見が出され、予定時間を超えて、熱心な討論が繰り広げられた。

《開催詳細》
【日時】2011年1月28日(金)14:00~18:00
【会場】お茶の水女子大学本館135号室カンファレンスルーム
【講師】岡野八代(同志社大学大学院)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
【参加者数】20名

2011/5/11掲載

 


Okano Yayo
岡野八代


会場風景
会場風景

山本由美子特別講義「国連開発計画とジェンダー主流化」

 1/13(木)、バンコクの国連開発計画(UNDP)アジア太平洋地域事務所でプログラムスペシャリストとして活躍する山本由美子氏による特別講義が開催された。受講生は、本年度のアジア工科大学との研究交流プログラム「タイで、開発とジェンダーを学ぼう」に参加する学生を中心とした博士前期課程開発・ジェンダー論コース院生。講義内容は、国連組織およびUNDP事業の概略説明、講師自身がアジア太平洋地域事務所で担当している業務の内容や、現在の職に就いた経緯など。開発支援の現場ではどのような考え方のもとに事業が進められているかという、最先端の報告と合わせて、大学院修了後のジェンダー領域の専門家としてのキャリアパスを考えるうえでも参考になることの多い講義であった。後半の質疑応答では、院生たちそれぞれの研究テーマに関する質問が出され、AIT研修を事前に控え、個々の研究内容についての考えを深める機会ともなった。

《開催詳細》
【日時】2011年1月13日(木)10:30~12:00
【会場】お茶の水女子大学本館135号室カンファレンスルーム
【講師】山本由美子(UNDPアジア太平洋地域事務所プログラムスペシャリスト
「Introduction: United Nations Development Programme (UNDP) and Gender Mainstreaming」
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
【参加者数】12名

2011/2/23掲載

 


Yamamoto Yumiko
山本由美子



会場風景
会場風景

シンポジウム「ケア・エコノミーの現在」

 ジュリー・ネルソン氏による基調講演では、2000年に発表された共著論文「For Love or Money -- Or Both?」を基に、以降10年間の動きを追っての議論が展開された。
 通常の賃金労働が自己の利益を動機とするとされているのに対し、長く家庭内の無償労働として位置づけられてきたケア労働は他者への愛を動機とするとみなされている。現実的には、ケア労働は高度のスキルを必要とする専門職であり、需要は増加しているにも関わらず、ケア労働者の賃金は上昇しない。この現象について、一般的な経済学は、ケア労働は女性が「生まれながらに」持つ性格や能力をもって実践できるものであるため特別な訓練やスキルを必要としないことが低賃金の理由である、と説明してきた。ネルソン氏は、こうした分析が、人の経済行為は自己利益追求であることを前提としながら、賃金の低さの理由づけには利他的な側面を持ち出しているという矛盾を指摘し、その上で、ケア労働に対する適切な賃金制度や労働環境の整備の必要を主張した。
 コメンテーターの伊田久美子氏は、ネルソン氏の主張に賛同し、ケアにおける身体的な労働の面が軽視されていると指摘。また、近年は男性の参入が増加傾向であるが、男性労働者は比較的高い賃金を取り管理職を務める傾向があり、ケア労働者間のジェンダー格差を生じさせていると解説した。
 次に、コメンテーターの足立眞理子氏は、ケア・エコノミー分析におけるフェミニスト経済学者の視点の重要性を強調。ケア労働市場を特に取り出して議論することの価値を指摘し、ケアの労働市場の議論では、その他の労働市場における差別論以上に、象徴化された女性性の議論の混入を免れることが出来ないと論じた。
 この後、フロアを交えて活発な討論が持たれ、シンポジウムは幕となった。

《開催詳細》
【日時】2011年1月8日(土)13:00~16:00
【会場】お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科棟6階大会議室
【基調講演】Julie A. Nelson(マサチューセッツ大学ボストン校) 「For Love or Money?: Current Issues in the Economics of Care」
【コメンテーター】伊田久美子(大阪府立大学)/足立眞理子(お茶の水女子大学)
【司会】申琪榮(お茶の水女子大学)
【挨拶】戒能民江(お茶の水女子大学副学長)/山本由美子(国連開発計画(UNDP)アジア太平洋地域事務所プログラムスペシャリスト)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
【参加者数】45名
【参考文献】Nelson, J. and Folbre, N. (2000) "For Love or Money--Or Both?", Journal of Economic Perspectives, 14(4), Fall 2000, pp. 123-140.

この講演の英文原稿は『ジェンダー研究』第14号(2011年3月)に掲載されました。

2011/2/4掲載

Julie A. Nelson
Julie A. Nelson

伊田久美子
伊田久美子

足立眞理子
足立眞理子

会場風景
会場風景

新任の研究推進支援員として、板井広明さんが着任しました。

12/1、新任の研究推進支援員として、板井広明さんが着任しました。 以下は自己紹介です。

「イギリスの18~19世紀の功利主義哲学、とくにJ.ベンサムの研究をしています。ジェンダー研究については、ほとんど素人なものの、ベンサムの女性論を論文にしたこともあり、少なからぬ関心を抱いてきました。研究支援推進支援員の仕事として、ジェンダー研究センターの催しに関わることになるので、ジェンダー研究を知るとてもよい機会をいただいています。
 研究支援推進支援員としての主な仕事は、ウェブ・サーバの管理です。着任間もないこともあり、先生やスタッフの方に助けていただいていますが、いろいろ仕事をこなして研究の推進支援に貢献したいと思います。どうぞよろしく御願いいたします。」

2010/12/22掲載

佐藤梢さん、鍋野友哉さん送別会

11/17(水)昼食時、佐藤梢さん(科研費研究員、10月末退職)、鍋野友哉さん(研究支援推進員、11月末退職)の送別会が開かれました。

佐藤さん、鍋野さん送別会

センター教員をはじめ、スタッフ、院生ともども、お二人にはいろいろな場面で大変お世話になりました。手際の良い仕事ぶりでセンター活動を支えてくださった佐藤さん、鍋野さんに改めてお礼を申し上げるとともに、お二人の今後ますますのご活躍をお祈りいたします。

2010/12/3掲載

エヴァ・キテイ教授講演会「ケアの倫理からグローバルな正義論へ」

エヴァ・キテイ氏の講演は、著書『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(牟田・岡野監訳、2010 白澤社刊)に基づき、さらにグローバルな視野を交えて展開された。キテイ氏は、依存者および依存労働者を含むすべての人が平等であるような平等概念およびそのための条件を模索し、「依存」が人間にとって不可避の条件であり、依存とそのケアが入れ子状になった状態であることを認識するなら、平等な社会とは公正でケアに満ちた社会でなければならないと述べた。そして依存者だけでなく彼女たちをケアする依存労働者のニーズに社会はどう応えるべきか、という重要な視座を提起した。本講演では、このような「関係性にもとづく平等」の議論に加え、移民として依存労働を提供する女性たちとグローバルな経済的不平等の問題について考察すべき局面であることも指摘した。コメンテーターである江原由美子氏は、依存者のケアが「ライフ選択」の問題には還元しえないにもかかわらず、このことは男女平等の主張の中で見えなくなってしまったこと、日本では依存労働者の立場の弱さにはあまり触れられてこなかったことなどを指摘し、これらの点において、依存と依存労働を軸にしたキテイ氏の議論が、極めて示唆的であると述べた。

《開催詳細》
【日時】2010年11月13日(土)18:00~20:30
【会場】お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科棟6階大会議室
【講師】Eva F. Kittay(NY州立大学ストーニー・ブルック校)
【コメンテーター】江原由美子(首都大学東京)
【通訳】岡野八代(同志社大学)
【司会】牟田和恵(大阪大学)
【主催】ジェンダー法学会/お茶の水女子大学ジェンダー研究センター/東北大学GCOE「グローバル時代の男女共同参画と多文化共生」
【参加者数】71名
【参考文献】エヴァ・F・キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(岡野八代・牟田和恵監訳、白澤社刊)

この講演の英文原稿は『ジェンダー研究』第14号(2011年3月末刊行予定)に掲載されます。また、この講演の内容を含めた単行本、エヴァ・F・キテイ/岡野八代/牟田和恵(共著)『ケアの倫理からグローバルな正義論へ』(仮題)が、2011年春、白澤社から刊行される予定です。

2010/11/29掲載

エヴァ・キテイ教授講演会3
Eva F. Kittay
エヴァ・キテイ教授講演会1
江原由美子
エヴァ・キテイ教授講演会2
左から江原、牟田、キテイ、岡野の各氏
エヴァ・キテイ教授講演会4
会場風景

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