ジェンダー研究の国際的拠点 - お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター
 

IGS通信17号

2004年4月30日

ジェンダー研究センターでは下記の要領で公開セミナー、夜間セミナーを開催致します。 大学内外に開かれたセミナーですので、皆様どうぞふるってご参加ください。

公開セミナーのお知らせ

お茶の水女子大学ジェンダー研究センター(IGS)主催 公開セミナー
「VINGSの挑戦―大学におけるトランスカルチュラリティとジェンダー研究の試み―」

Prof. Michiko Mae (前みち子教授)
お茶の水女子大学ジェンダー研究センター外国人客員教授
デュッセルドルフ大学東アジア研究所所長・教授

このたびジェンダー研究センターでは、前みち子教授を迎え、公開セミナーを開催します。  
前教授は、1984年からマールブルグ大学、1993年以来現在までデュッセルドルフ大学と、長年ドイツの大学で教鞭をとってこられています。主著には、 Frauenbewegungen weltweit. Aufbrueche, Kontinuitaeten, Veraenderungen. 2000(『世界の女性運動-成立、継続性、変容』)、Getrennte Welten, gemeinsame Moderne? Geschlechterverhaeltnisse in Japan.1997(『分かたれた世界、共通の近代? 日本のジェンダー』)、『ドイツの見えない壁-女たちが問い直す統一』(共著).1993などが あり、主論文には、Transkulturalitaet und Genderforschung.2002.(「トランスカルチャーとジェンダー研究」)、 Oeffentlichkeit und Privatheit im japanischen Modernisierungsprozess. 2002.(「日本の近代化過程における公と私」)などがあります。
主なる研究領域は、日独比較ジェンダー研究、ジェンダーと異文化間問題、トランスカル チャー研究とジェンダーです。1992年にドイツにおける学際的な日本関連ジェンダーワークショップをイルゼ・レンツ氏とともに立ち上げ、毎年開催してい るほか、すでに40册をこえるジェンダー研究書シリーズ「ジェンダーと社会」の編集委員でもあります。  このたびは、ドイツの大学におけるインターネット上のジェンダー教育の試みを紹介し、ドイツの大学改革ともからめて論じてくださいます。1回のみの公開セミナーになりますので、日時を確認のうえ、ふるってご参加ください。

公開セミナー概要 -Prof. Michiko Mae (前みち子教授)

今日、グローバル化する世界に対応した新しい大学教育の形を求めて世界各国で大々的な改革が行われつつある。ドイツの大学改革の一環としてメディア教育の 充実が目標とされているが、それに応える形でジェンダー研究ネットワークのなかから、インターネットを使った、新しいジェンダー教育の方向を探るプロジェ クトが誕生した。それがVINGSすなわち、ヴァーチュアル・インターナショナル・ジェンダー・スタディーズ(Virtual  International Gender Studies)である。ドイツの様々な大学や研究者の共同プロジェクトであるVINGSは、国際性と学際性 に重点をおき、インターネットの特徴をジェンダー教育に活かし、同時に受講者に新しいメディア利用能力を身につけさせることを目的にして開設された。
 今回のセミナーでは、このプロジェクトを紹介し、ジェンダー研究の成果と対応する新しい形の教育とどのように結びつけることができるのかを扱うことにする。 なお、講演者が受け持ったコースは、新しい文化コンセプトである「トランスカルチュラリティ」とジェンダー研究を結びつけるものである。国民国家に枠づけ られた文化がそれぞれのジェンダー規範を規定してきたことを考えるとき、そのような文化コンセプトの形成と発展がジェンダー規範を変化させるためにぜひと も必要であると思われる。この新しい試みを盛り込んだネット上のジェンダー教育は、大学改革にも新しいインパクトをあたえることができるかも知れない。 ヴァーチュアルなジェンダー教育は、日本でも、また国際的な基盤で行うことも可能であり、そのような可能性について参加者と議論したい。

公開セミナー要項

開催日時: 2004年5月20日(木)
開催場所: お茶の水女子大学人間文化研究科棟6F大会議室
使用言語: 講義は日本語
参加費: 無料(ただし、当日配布する資料代をいただきます)
交通機関: 丸の内線茗荷谷駅、もしくは有楽町線護国寺駅から徒歩10分IGSホームページ左側のメニューにて、大学までの案内図および大学内の地図が掲載されております。ご参照ください。大学構内入校の際、正門と南門にて身分証明書の提示をお願いすることがあります。ご協力の程よろしくお願い致します。
申し込み方法: お申し込みは、別紙のファックス送信用フォーマット(ms-word 形式)をご利用ください。
E-mailにてお申込みになる場合は、お手数ですが、別紙の項目を参考にして氏名・連絡先等をお知らせください。申し込みに関してこちらから確認のご連絡は行っておりません。
申し込み締切: 2004年5月19日(水)午後4時必着
(締め切り後のお申し込みは、公開セミナー事務局までご連絡ください)
申し込み先: 国立大学法人 お茶の水女子大学ジェンダー研究センター 夜間セミナー事務局 宛
住所 :〒112-8610 文京区大塚2-1-1
Fax: 03-5978-5845 URL: http://www.igs.ocha.ac.jp/ 
E-mail: igs@cc.ocha.ac.jp(件名に「夜間セミナー参加」と明記してください)

 

第16回夜間セミナーのお知らせ

お茶の水女子大学ジェンダー研究センター(IGS)主催 第16回夜間セミナー
「ジェンダーの社会構築―フェミニズムの視点による実証心理学―」

Rhoda Kesler Unger (ローダ・ケスラー・アンガー)
お茶の水女子大学ジェンダー研究センター外国人客員教授
米国 ブランダイス大学ジェンダー研究センター専任研究員

お茶の水女子大学ジェンダー研究センター(IGS)は、2004年6月から7月まで客員教授としてローダ・ケスラー・アンガー教授をお迎えすることになりました。

アンガー教授は、米国において女性心理学という分野の発展に多大な貢献を果たした著名な研究者であり、現在はブランダイス大学女性学研究センターで専任研 究員としてご活躍されております。アンガー教授は、1966年にハーバード大学から実験心理学の博士号を取得後、1970年代初期のフェミニズム興隆に積 極的に関わり、従来の「科学的」「客観的」であるはずの実験心理学に歴史的観点が欠如している点を指摘されました。1970年代、実験心理学と自分自身の 問題意識が乖離しているという自覚を多くの研究者が持ちつつも、方法論的に正当性であると見なされたものに背をむけることは勇気のいることでした。実験心 理学自体を内省的に捉え直す機運の薄いこの時代に、アンガー教授は、1975年に発表した「女性における心理学的性別役割の再考」の中で、心理学の分野に ジェンダー概念を取り入れる重要性を唱えるなど、性差が社会的に構築されたものだという社会学的視座を実験心理学に積極的に取り入れてきました。

これまでアンガー教授は女性、ジェンダーに関する心理学の本を9冊、また60を超える学術論文を発表されています。1989年には Representations: Social Constructions of Gender、1992年のWomen and Gender: A Feminist Psychology、1997年In Our Own Words: Readings on Women and Gender、そしてフェミニスト心理学の展開の歴史を自己内省的に分析した1998年のResisting Gender: Twenty-Five Years of Feminist Psychology、また編者としてA Handbook on the Psychology of Women and Gender(2001)等多数刊行されています。これは、『女性とジェンダーの心理学ハンドブック』として2004年3月日本語翻訳が刊行されていま す。  近年では、女性の身体様式、典型的思考、権力等、きわめて社会的な視座から女性やジェンダーの心理学を分析するなど、アンガー教授の研究領域・問題意識 は非常に幅広いものになっています。女性心理学研究に大きなパラダイム変革をせまった著名な研究者の一人として、女性心理学の展開の歴史と課題を中心に夜 間セミナーを担当して頂きます。大学内外問わず、みなさまふるってご参加ください。

第16回夜間セミナー実行委員会 河野貴代美、竹村和子、青木紀久代、信田さよ子
事務局:長谷川和美、原田雅史

セミナーを始めるにあたって ─ ローダ・ケスラー・アンガー

この夜間セミナーでは、ジェンダーが社会的にいかに構築されているか、そのメカニズムをフェミニスト心理学者による実証的研究を通して探策するつもりで ある。4回のセミナーは、どの回も心理学の様々な分野に焦点を当てる。そして、破綻なく当然だと見える男らしさや女らしさを作り出すために、それぞれに異 なる分析レベルの過程が、どのように相互に関わるかを検証したい。分析レベルには、個人の中で操作される過程(例えば態度や認知)、対人間関係上での過程 (他人からの影響)、そして社会構造上の可変要因(権力や特権の基準)が含まれる。これらの分析は、共有されている社会的現実の一部として、女性がいかに 社会構築の主体や対象になるかを明らかにするだろう。さらに、これらはジェンダーの変わりゆく見解に関する、文化的・歴史的文脈の役割をも探究することに なると思われる。

コメンテーター紹介

青野篤子(松山東雲女子大学教授)

研究領域は、社会心理学、ジェンダー心理学。編著に、『ジェンダーの心理学―男女の思いこみを科学する―』(ミネルヴァ書房、1999年)、『心理学とジェ ンダー―学習と研究のために―』(有斐閣、2001年)、共訳書に『女性とジェンダーの心理学ハンドブック』(北大路書房、2004年)、論文に「フェミ ニズムと教育」(『児童心理学の進歩』39、 2000年)、「対人距離に及ぼす性と地位の影響―従属仮説の観点から―」(『社会心理学研究』 19、2003年)など多数刊行。

坂元章(本学教授)

研究領域は、社会心理学、社会情報学、教育工学。主な著書に、『認知的複雑性と社会的知覚システムの進展』(風間書房、1993年)、共著書に『心理学の世 界』(有斐閣、1994年)、編著書として『サブリミナル効果の科学―無意識の世界では何が起こっているのか―』(学文社、1999年)、『インターネッ トの心理学―教育・臨床・組織における利用のために―』(学文社、2002年)、『メディアと人間の発達』(学文社、2003年)の他、多数論文を刊行。

青木紀久代(本学助教授)

研究領域は、発達臨床心理学を通じての乳幼児から成人に至るまでの特に女性のライフサイクル上に生じる心の不適応的問題と成長について。著書に、『拒食と過 食―心の問題へのアプロ-チ』(サイエンス社、1996年)、『調律行動から見た母子の情緒的交流と乳幼児の人格形成』(風間書房、1999年)、『子ど もを持たないこころ―少子化問題と福祉心理学』(北大路書房、2000年)、『保育に生かす心理臨床』(ミネルヴァ書房、2002年)、他がある。

信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)

研究領域は、臨床心理学、児童学。主な著書に、『アダルト・チルドレン完全理解~一人ひとり楽にいこう』(三五館、1996年)、「アディクションアプロー チ」(医学書院、1999年)、『依存症』(文春新書:文芸春秋社、2000年)、『DVと虐待―「家族の暴力」に援助者ができること』(医学書院、 2002年)、『愛しすぎる家族が壊れるとき』(岩波書店、2003年)、『家族収容所―「妻」という謎』(講談社、2003年)など他多数出版。

講義内容

I. 2004年6月30日(水) 
心理学の歴史における主題、行為者、エージェントとしての女性

この回では、知識社会学の観点からアメリカ合衆国における女性心理学の展開を検討する。単なる吟味の対象として、女性の行動様式は男性のそれとは異なりまた 逸脱していると考えられてきたが、ジェンダー的視点を通し、これらがどのように心理学の中で進化してきたかを分析したい。それは、フェミニスト心理学の女 性・男性の研究において、既存の組織化された偏見を検討し、権力や特権のシステムに関連するジェンダーの社会構築について考察するものである。
コメンテーター:青野篤子(松山東雲女子大学教授) 司会:河野貴代美(本学教授)

II. 2004年7月7日(水)
ジェンダーを生きる、権力を行使する
―社会心理学は女であること、男であることについて何を語っているか?―

この回では、社会心理学者による実証的研究が、ジェンダーを創生し構築する過程をいかに説明できるかを見ていきたい。ここでは、自己充足的思い込みに関 する研究(自己表現や行為の承認)および典型的な脅しやアンビバレントな性差別に関する比較的新しい研究に焦点を絞って考察したい。
コメンテーター:坂元章(本学教授) 司会:河野貴代美(本学教授)

III. 2004年7月14日(水)
子宮から墓場までの女性イメージとその心理的示唆

この回では、人生の各段階(幼児期から老齢期まで)を踏まえた視点で、女性をあらわす視覚的・言語的イメージについて述べる。これは、女性の身体的外見 に対する社会全体の注視を検証し、女性自身の身体観に及ぼす影響を考察することである。さらに、身体的魅力の欠如と社会的逸脱が、いかに女性観のなかに織 り込まれ、社会的コントロールの勢力として作用するかを論じたい。
コメンテーター:青木紀久代(本学助教授) 司会:竹村和子(本学教授)

IV. 2004年7月21日(水)
性差別とその帰結 ―心理的問題へのフェミニスト的アプローチ―

この回ではアメリカ合衆国における男女の権力の差異が、さまざまな心理的問題を、異なった割合で引き起こす事態を考察したい。ジェンダー化した社会的ス トレス源が女性の精神的、身体的健康に及ぼす影響に焦点を当てる。さらに、心理的問題の発症とその治療の分野で、ジェンダー、民族、社会的階層の関わりに 基盤をもつ理論であり実践でもあるフェミニスト・セラピーを論じたい。
コメンテーター:信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長) 司会:竹村和子(本学教授)

 

夜間セミナー要項

開催日時: 2004年6月30日、7月7日、14日、21日(全回水曜日)6時30分から9時まで
開催場所: お茶の水女子大学理学部3号館
使用言語: 講義は英語。日英逐次通訳つき。
参加費: 無料(ただし、当日配布する資料代をいただきます)
交通機関: 丸の内線茗荷谷駅、もしくは有楽町線護国寺駅から徒歩10分IGSホームページ左側のメニューにて、大学までの案内図および大学内の地図が掲載されております。ご参照ください。大学構内入校の際、正門と南門にて身 分証明書の提示をお願いすることがあります。ご協力の程よろしくお願い致します。
申し込み方法: お申し込みは、別紙のファックス送信用フォーマット(ms-word 形式)をご利用ください。
E-mailにてお申込みになる場合は、お手数ですが、別紙の項目を参考にして氏名・連絡先等をお知らせください。申し込みに関してこちらから確認のご連絡は行っておりません。
申し込み締切: 2004年6月23日(水)午後4時必着
(締め切り後のお申し込みは、夜間セミナー事務局までご連絡ください)
申し込み先: 国立大学法人 お茶の水女子大学ジェンダー研究センター 夜間セミナー事務局 宛
住所 :〒112-8610 文京区大塚2-1-1
Fax: 03-5978-5845 URL: http://www.igs.ocha.ac.jp/ 
E-mail: igs@cc.ocha.ac.jp(件名に「夜間セミナー参加」と明記してください)

Information

★ お茶の水女子大学21世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」 の報告書、『F-GENSジャーナル』創刊号が出来上がりました。1年目は実質的 にはほぼ半年間の活動でしたが、さまざまな活動が開始し、充実したものに なりました。 *お問い合わせは、下記まで。 お茶の水女子大学COE「ジェンダー研究のフロンティア」事務局 (TEL:03-5978-5547 FAX:03-5978-5548 E-mail:f-gens@cc.ocha.ac.jp)

★『現代思想』6月号に李小江平成15年度IGS客員教授と上野千鶴子東京大学 教授の対談記事が掲載されます。この対談は李小江先生がIGSに赴任中に行わ れたものです。ご興味のある方は、ぜひご覧下さい。

★IGS通信の会員登録は、3月末にて更改となります。平成16年度も本会員を 継続ご希望で、まだお申し込みいただいていない方は、通信費・事務手数料 1200円を小額切手にて、5月末までにジェンダー研究センターにご送付ください。 有効期間は1年間、平成17年3月末日までとさせていただきます。 なお、ご送付の際、封筒の裏にお名前とご住所を、封筒の表には「IGS通信」と ご明記くださいますようお願い申し上げます。また、新規会員をご希望の方や、 ご住所等に変更等がありました場合は、その旨ご一報いただけましたら幸いです。

発行:お茶の水女子大学ジェンダー研究センター (Institute for Gender Studies, the)
〒112-8610 文京区大塚2-1-1  Fax: 03-5978-5845
E-mail: igs@cc.ocha.ac.jp  URL:http://www.igs.ocha.ac.jp/

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