ジェンダー研究の国際的拠点 - お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター
 

IGS通信2014

埼玉新聞に大木さんがインタビュー取材を受けた記事掲載

2015年3月29日の埼玉新聞一面に、大木直子さん(2014年度IGS研究協力員)へのインタビューを含む、統一地方選挙関連の記事が掲載されました。インタビュー中、大木さんは、女性の政治参画の障害のひとつに現行の選挙制度の問題があることを指摘し、クオーター制導入検討も含む議論が必要と述べています。記事全文をお読みになりたい方は、ジェンダー研究所前の掲示板へ。

《 2015/4/16掲載 》


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第2回研究交流会「都市周縁からCBDへ:マニラの外貨獲得部門における女性労働と居住の変容」

 2015年2月18日(水)に2014年度第2回IGS研究交流会を開催。太田麻希子氏(IGS研究協力員/明治学院大学ほか非常勤講師)が「都市周縁からCBD(Central Business District)へ:マニラの外貨獲得部門における女性労働と居住の変容」と題する研究報告をおこなった。太田氏の専門は、人文地理学。報告では、フィリピン、マニラにおける近年の就業および空間構造の変化、そして不平等な都市開発の在り方がスラムにいかなるインパクトをもたらしたのかを検証した。太田氏は、現地調査の結果と先行研究・資料の検討をもとに、近年のマニラ首都圏、および同地域の交通利便性が低いスラムの女性の就業と世帯構造に焦点を当てた。そして、BPO(Business Process Outsourcing)産業の成長を背景に従来と異なる女性の雇用が増加したということと、調査地のスラムで都心部へ若年女性オフィスワーカーを送り出す世帯が観察されていることを指摘し、首都圏の産業構造の変容が都市周縁のスラムにも及び、従来の階層構造と女性の居住が変容しつつある可能性について考察した。フロアからは、階層上昇移動の要因や、今後の現地調査について質問がなされた。

(記録担当:平野恵子 IGS研究機関研究員)

【日時】2015年2月18日(水)17時~20時
【会場】仮設プレハブ1階 ジェンダー研究センター
【題目】「都市周縁からCBDへ:マニラの外貨獲得部門における女性労働と居住の変容」
【報告者】太田麻希子(IGS研究協力員、明治学院大学ほか非常勤講師)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
【参加者】6名

《 2015/3/27掲載 》


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『地方議会人』1月号に大木直子さん論考掲載

 IGS研究協力員・大木直子さん執筆の「なぜ、日本の地方議会では女性議員が増えないのか」が、『地方議会人』2015年1月号の特集「女性が活躍する社会の実現」に掲載されています。地方議会に女性が少ない現状分析とその原因となっている選挙制度についての論考です。掲載号をジェンダー研究センターにご寄贈いただきました。センター内の雑誌書架に置きますので、是非お手にとってご一読下さい。

《 2015/1/27掲載 》


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サンドラ・ハーディング講演会
「ミスター・ノーウェアのあとに:フェミニストの客観性、そして科学的主体とは何か」

 12月17日にサンドラ・ハーディング氏(UCLA栄誉教授)を迎えて、「ミスター・ノーウェアのあとに:フェミニストの客観性、そして科学的主体とは何か」と題する講演会を開催した。氏は、第一波フェミニストとして、その業績が広く知られている。講演では、著書『科学と社会的不平等:フェミニズム、ポストコロニアリズムからの科学批判』(北大路書房)で展開された、フェミニスト視点からの科学と価値中立性に関する論が提示された。フェミニズム、ポストコロニアリズムなど、社会正義の運動にコミットする立場からの科学がもとめる客観性とは、そして科学的主体とは、どういうものか。価値中立性を謳う科学は、恣意性から切断可能であるという前提で議論されてきた。しかしながら、ハーディング氏によれば、これは、弱い客観性に過ぎない。支配的な価値なり政治的主張に沿った形での価値中立に過ぎず、結果として男性支配的な方向への科学実践の推進力となってきた。ここからハーディング氏が主張するのは、価値中立性を自覚した「強い客観性」である。他の学問、専門領域と有機的にリンクし、互いに排除しないスタンド・ポイント理論は、これまで「科学的である」とはみなされていなかった女性の生活や身体の問題に向かって、直接的に、そして政治的な接続可能性を含んでいる。以上の講演を受けて、社会調査法やアクションリサーチ、そして伝統的な知の生産制度からの脱却がいかに可能となるかといった政治的理論的な指摘や質問が熱心になされた。

(記録担当:平野恵子 IGS研究機関研究員)

《開催詳細》

【日時】2014年12月17日(水)15:00~17:00
【会場】お茶の水女子大学本館209号室
【報告者】サンドラ・ハーディング(UCLA栄誉教授)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
【参加者数】21名

《 2015/3/31掲載 》


サンドラ・ハーディング氏


  



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国際シンポジウム「サステイナビリティとジェンダー」


チョイ氏


ソン氏


萩原なつ子氏


高雄綾子氏


渡辺順子氏


岡部幸江氏


田中由美子氏


北村友人氏

 2014年11月1日に国連大学ウ・タント国際会議場において、国際シンポジウム「サステイナビリティとジェンダー」が開催されました。同シンポジウムは、本年11月に、持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議が日本で開催されることにちなみ、ジェンダーの観点から「サステイナビリティ」を検討し、併せてESDに関わる教育の役割について考える機会とするため、お茶の水女子大学ジェンダー研究センターと、国連大学サステイナビリティ高等研究所が中心となり主催したものです。国内外から広く関心を集め、関係者も含めると約200名が参加しました。
 午前の部では、まずユネスコ教育局・チョイ氏からのビデオメッセージ「持続可能な開発のための教育とジェンダー:未来へつなぐもの」、続いて韓国両性平等教育振興院・ソン氏による「ポスト2014/2015年国際開発アジェンダとジェンダー課題」の基調報告がなされました。これまでの政策を検証し、2015年から始まる「持続可能な開発目標SDGs」に向けてのジェンダー課題の方向性について、有益な質疑応答がなされました。
 午後の部では、立教大学・萩原氏による「エコロジカル・フェミニズムの超克」、フェリス女学院大学・高雄氏による「〈不安〉から〈ヴィジョン〉へ:ドイツ市民運動と福島との接点」、一橋大学・宮地氏による「震災におけるトラウマとジェンダー」、大磯町議員・渡辺氏による「小さな議会のエネルギー条例づくり:3・11 後のとりくみ」、大磯エネシフト・岡部氏による「地域からのエネルギーシフト:3 万人のまちからできること」の5報告がなされました。エコフェミニズムの展開可能性、チェリノブイリ原発事故の経験をもつドイツでの市民運動の広がり、被災がもたらす負荷とメンタル面の問題、そして再生エネルギーへの自治体の取り組みと地域運動との連携という事例を踏まえた提言まで、幅広い視点に立ちつつも、包括的な議論が提示されました。これを受けての全体討議では、コメンテーターとしてJICA・田中氏と東京大学・北村氏を迎え、会場との質疑も含めて活発な討論が展開されました。
 本シンポジウム開催にあたっては、現在ジェンダー研究センター客員研究員の舘かおる及び菅野琴の両氏により、これまでIGSの研究プロジェクトとして推進してきた活動の蓄積のもとに、国内外の研究者、議員、団体職員など多様なスピーカーを招き、充実したシンポジウムとなりました。とりわけ、2011年3月11日の東日本大震災によって甚大な自然災害と原発事故を経験した日本から、持続可能で公正な社会へ向けての変革の動きを発信する貴重な機会となりました。
 なお同シンポジウムの成果は、菅野氏を中心とするチームによって11月10日に名古屋国際会議場において開催されたESDユネスコ世界会議サイドイベント“Why gender matters in ESD”(なぜ ESD にジェンダーが重要か?) で報告されました。

[記録担当:佐藤美和(国際シンポジウム「サステイナビリティとジェンダー」事務局研究員)]

報告ファイルがご覧いただけます。
*なお以下にリンクしている報告ファイルは報告者が当日の質問に応え補足しているものもあります。

午前の部 持続可能な開発のための教育(ESD)とジェンダー
基調報告
「持続可能な開発のための教育とジェンダー―未来へつなぐもの」
 スーヒョン・チョイ
(ユネスコ教育局 教育・学習内容部長(ビデオメッセージ))

「ポスト2014/2015年国際開発アジェンダとジェンダー課題」
 ヒュンジュウ・ソン
(韓国両性平等教育振興院教授)

午後の部 ジェンダーの視座を持った持続可能な社会にむけて
パネリスト報告

「エコロジカル・フェミニズムの超克」
 萩原なつ子
(立教大学教授)

「〈不安〉から〈ヴィジョン〉へードイツ市民運動と福島との接点」
 高雄綾子
(フェリス女学院大学専任講師)

「震災におけるトラウマとジェンダー」 
 宮地尚子
(一橋大学大学院教授) 

「小さな議会のエネルギー条例づくり~ 3・11後の取り組み」
 渡辺順子
(大磯町議員、元議長)

「地域からのエネルギーシフトー3万人のまちからできること」
 岡部幸江
(一般社団法人大磯エネシフト理事長)

コメント
 田中由美子(JICA国際協力専門員)
 北村友人(東京大学大学院教育学研究科准教授)

《開催詳細》
【日時
 2014年11月1日(土)10:30~17:00
【会場】
 
国連大学ウ・タント国際会議場

【司会・コーディネーター】
・舘かおる (お茶の水女子大学名誉教授・同ジェンダー研究センター客員研究員)
・菅野琴 (元ユネスコ職員、お茶の水女子大学ジェンダー研究センター客員研究員)
【開会の辞】
・武内和彦(国連大学上級副学長)
・羽入佐和子(お茶の水女子大学長)
・岩本渉(文部科学省参与)
【閉会の辞】
・足立眞理子(お茶の水女子大学ジェンダー研究センター長)

【主催】
 国連大学サステイナビリティ高等研究所
 お茶の水女子大学・ジェンダー研究センター
【共催】
 
地球環境パートナーシッププラザ
【後援】
 
日本ユネスコ国内委員会、
 国立女性教育会館、
 国際協力機構(JICA)
【協賛】
 
フェリス女学院大学
【参加人数】
 
160名

 

 

 

 

 

 

 

《 2014/12/17掲載 》


武内和彦氏


羽入佐和子氏


岩本渉氏


足立眞理子氏


舘かおる氏


菅野琴氏

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世界女性学会参加記

The 12th Women’s World Congress-2014 (University of Hyderabad, India)に参加して 本学リサーチフェローの小川真理子さん(2012年度ジェンダー学際研究専攻学位取得)がインドのハイダラバード大学で開催された第12回世界女性学会に参加され、その報告を寄せて下さいました。
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1.第12回世界女性学会の概要
 1)開催期間:2014年8月17日から8月22日まで
 2)会場:ハイダラバード大学(インド)
 3)学会URLhttp://womensworld2014india.com/
 4)内容:インド初の世界女性学会の会場であるハイダラバード大学は1974年に設立されたインドを代表する大学である。特に自然科学分野でインド随一の研究実績を挙げている。12回目の世界女性学会には、約37ヵ国から1000名余りの参加者が集い、ジェンダーと健康、文化、経営、教育、暴力、IT、グローバリゼーション、労働、法律等多岐にわたるテーマの報告が行なわれた。17日は、夕方から開会式が大学講堂で行なわれ、主催者からの挨拶の後、インドの伝統舞踊が披露された。18日から20日に各国の研究者の報告が行なわれ、21、22日は、大学ではフィルム上映とディスカッション、また、アクティビティとしては織物産業を営む村へのフィールドトリップ等が実施された。次回の開催は、2017年7月30日から8月4日、ブラジルのサンタカタリナ連邦大学(フロリアノポリス)を予定している。

2.ハイダラバード市の概要・特色
 ハイダラバードは、デリーから国内便で約2時間、デカン高原の中央に位置する、南インドのテランガーナ州の州都である(2014年にアーンドラ・プラデーシュ州から分割、同州都も兼ねる)。ハイダラバードは、IT産業等の科学技術を中心に急速に経済発展しつつあるインド4番目の人口(681万人)を擁する大都市である。

3.感想:世界女性学会に参加して
 初めて参加した世界女性学会は、インドの文化や歴史の一端にも触れることができ、とても印象深いものになった。私は、「ジェンダーと暴力」の分科会で報告をした。90分間に6人の報告が行なわれ、ナイジェリアやロシア、インド国内の各地域の研究者が女性に対する暴力の調査研究について報告した。私は、日本のDV被害者支援の現状や民間シェルターの支援者のインタビュー調査結果を提示し、シェルター運動の分析・考察を中心に報告を行なった。会場からは、ブラジルやコロンビア出身の研究者から日本のシェルター運動と同じ様な動きが自分の国にもあるという発言があり、それぞれの国の状況について伺う貴重な機会を得た。この他の分科会では、韓国の従軍慰安婦の女性達のオーラルヒストリー分析、インドにおける人口の性比や貧困の女性化、名誉の殺人等に関して興味深い報告を聞くことができた。また、日本の研究者の報告では、日本の既婚女性のパートナーが非正規である割合を分析し女性の貧困が深刻化していることを示した研究報告や日本の女性ホームレス、在日韓国人女性の運動、ヘイトスピーチ等、昨今の日本の現象を様々な立場から報告したパネルディスカッションを聞く機会を得、英語でのプレゼンテーションの組み立て方も含めて大変勉強になった。
 インド滞在最終日は、学会主催のフィールドトリップに参加した。ハイダラバードから車で約1時間半移動したナルゴンダ地区にあるイカット織で有名な村を訪れた。参加者は約30名でカナダ、オーストラリア、中国、ナイジェリア、スウェーデン等の研究者であった。主に女性が機織機で綿・絹織物を織り、男性がそれを販売していた。加えて、女性が伝統的な役割を担っている様子が垣間見られた。
 国際学会に参加・報告することの利点は、各国の現状を研究者から直接聞き、ネットワークを構築すること、また、開催地の文化や歴史、社会に触れることができることである。本学会でも、各国研究者と意見交換や情報共有の場を持つことができ、貴重な経験を積むことができた。

[小川真理子(本学リサーチフェロー)]
《 2014/11/28掲載 》



小川真理子氏



ハイダラバード




ナルゴンダ地区にて

  



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第1回「政党行動と政治制度」研究会「国際比較からみた国会審議の特色と問題点」

 7月10日に、第一回「政党行動と政治制度」研究会が行われた。本研究会は2014年度に上智大学・三浦まり氏、東京大学・スティール若希氏、本学・申琪榮氏の3名を中心メンバーとして立ち上げられた研究会であり、そのスタートとして当センターと共催による講演会が開催された。
 第一回研究会では、国会研究を専門とする大山礼子氏を迎えて、国際比較から見た日本の国会審議の特色と問題点について講演が行われた。大山氏は、まず、日本の国会の特異性として、女性議員が圧倒的に少ないこと、審議時間が短いこと、実質的審議がほとんど行われていないことを指摘し、特に、日本の国会が、強力で分権的な常任委員会制度を持ち、充実した立法補佐機構を有しているにかかかわらず、法案修正がほとんど行われないことが海外の研究者の間で長年「謎」とされていることを強調した。その主な要因として、55年体制下で確立された事前審査制度の確立、および、議院内閣制下の政府と国会の「切断」が挙げられ、それらが議院内閣制および立法過程に与える否定的な側面が明らかになった。最後に大山氏は、日本の議院内閣制を維持すべきとの立場から、国会審議を実質化するための改革案を提示した。
 質疑では、事前審査体制に関する質問やコメントが多く出された。事前審査の野党にとってのメリット、日本以外に事前審査が存在しない要因、マニフェストに基づく政策決定と事前審査の関係、請願の効力などについて質問が出された。国会審議の形骸化に関連して、国会議員の質の低下の傾向や選挙制度の見直しの必要性などのコメントがあった。さらにジェンダーの視点から、事前審議で予算も対象とするのは日本の特徴なのか、また事前審査が強力な状況では与党に関心がなければジェンダー関連立法は難しいのかなどの問いかけがあった。予報通りの悪天候となり、帰宅の足が心配される中にもかかわらず、多方面から多くの参加者を得て、最後まで熱心な質疑応答が行われた。

 専門性の高い論題であったが、大山氏の簡潔な説明や辛辣さとユーモアに富んだコメントが参加者の関心を引きつけ、皆が話に聞き入る様子が印象的であった。

文責 大木直子(IGS研究協力員/本学ほか非常勤講師)
雑賀葉子(本学博士後期課程)


《開催詳細》

【日時】2014年7月10日(木)17:30~19:30
【会場】お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科棟6階大会議室
【報告者】大山礼子(駒澤大学教授)
【司会】申琪榮(本学大学院准教授・IGSセンター員)
【参加者数】24人

【主催】「政党行動と政治制度」研究会、お茶の水女子大学ジェンダー研究センター

《 2014/7/28掲載 》



大山礼子氏


会場風景


  



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湘南学園高等学校 総合学習活動「ジェンダー」

 

 7月9日(水)に湘南学園高等学校の2年生4名がジェンダー研究センターに来所されました。フィールドワークを要件とする総合学習活動で6つあるテーマのうち、「ジェンダー」を選択された生徒さんたちです。

 事前に寄せられた質問に沿って、はじめに「ジェンダーとは何か」について平野より説明をおこないました。続いて、大木氏より女性の社会進出、特に政治分野におけるジェンダー課題について日本を事例に講義がなされました。議会におけるセクハラ問題に焦点が当てられ、現政権が掲げる成長戦略で女性の活用が叫ばれるいま、政治分野における女性の「活用」の現状把握とその分析は、日本のジェンダー課題を考察する上で時宜にかなったトピックでした。講義の最中も多くの質問がなされ、生徒さんたちの真剣な取り組みがみられました。湘南学園高等学校2年生の皆さん、ご来所有難うございました。

(文責:平野)

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《開催詳細》

【日時】2014年7月9日(水)14:00~16:30
【場所】本館123室
【講師】大木直子(IGS研究協力員/本学ほか非常勤講師) 、平野恵子(IGS研究機関研究員)

《 2014/7/17掲載 》

 

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第1回研究交流会 「地方議会における女性の代表性:日本と韓国の比較」

 7月3日にジェンダー研究センター第1回研究交流会が開催された。研究交流会は当センター研究協力員による研究成果発表を柱とし、議論をおこなうことで研究協力員各自の今後の研究に資するとともに、センター教員、関係者そして研究協力員間の交流促進を目的としている。

 2014年度第1回は、日本と韓国の地方議会における女性の代表性をテーマとした共同報告がおこなわれた。制度変更による女性の代表性への影響を考察する本報告では、選挙制度の変更とクォータ制の導入が女性議員の量的増加にとって重要な要素となっている韓国の地方議会の事例が前半に、選挙区や定数の変化といった制度の変更がみられる日本の地方議会の事例が後半に取り挙げられ、制度変更による女性の代表性への肯定的、否定的な影響の両側面が明らかにされた。

 報告に対し、雑賀氏は、制度変更への女性運動の関わりを指摘した。また申氏は、比較研究にあたっての共通項と差異を指摘し今後の研究展開への期待を示した。フロアからは、制度変更に加えて制度が変化する際の政治的・社会的背景について言及がなされ、報告者との活発な議論のやり取りがおこなわれた。

 地方議会レベルでの女性の代表性に焦点を当てる比較研究、特にアジアを事例とした先行研究は非常に少なく、今後の研究展開が待たれる興味深い成果報告であった。

(文責:平野)

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《開催詳細》

【日時】2014年7月3日(木)18時00分~20時30分
【会場】お茶の水女子大学本館135室(カンファレンスルーム)
【題目】「地方議会における女性の代表性:日本と韓国の比較」
【報告者】ユン・ジソ(カンザス大学教員/IGS研究協力員)、大木直子(本学ほか非常勤講師/IGS研究協力員)
【ディスカッサント】申琪榮(本学教員/IGSセンター員)、雑賀葉子(本学博士後期課程ジェンダー学際専攻)
【司会】平野恵子(IGS研究機関研究員)
【主催】お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
【参加者】7名

《 2014/7/15掲載 》

 

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証言を聴く会「フィリピン元日本軍「慰安婦」エステリータ・ディさんを迎えて」

 フィリピンより元日本軍「慰安婦」のエステリータ・ディさんをお迎えして、証言を聴く会を開催した。  
 当日は、ディさんたちロラ(フィリピン語でおばあさんの意)を支援しているリラ・ピリピナより、レチルダ・エクストレマデュラさん、そして日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議実行委員会より柴崎温子さんがコメントをおこなった。通訳は澤田公伸さんが、司会は申琪榮本学教員が務めた。
 はじめに、柴崎さんよりフィリピンにおける戦争の状況や「慰安婦」の強制連行の経緯など当時の状況について説明がなされ、次に、ディさんからの証言がおこなわれた。ディさんは、自らの半生をその場の風景が見えるような詳細な語りで描き出して下さった。特に、髪を掴まれ手を引っ張られた強制的な連行時の様子、そしてその後の性暴力の被害を、身ぶり手ぶりを交えて語って下さった。日本兵の撤退により解放された後も自分の秘密を打ち明けることが出来ず戦時中の経験を忘れるためにマニラに向かったディさんが故郷に戻ったのは、50年も経った後であったという。
 ディさんの証言に続いて、エクストレマデュラさんよりロラたちを支援するにいたる経緯と内容、そして本問題に関する「責任」の取り方について話があった。戦争犯罪被害者への謝罪、彼女たちの社会福祉の充実、そして歴史教科書への記載がロラたちへの正義の回復となることが説明された。またこの問題は、ロラたちだけの闘いではなく、国連が認定する戦争犯罪である戦時性暴力から次世代であるわれわれ自身を守り安心して暮らすための問題であること、すなわち聴衆であるわれわれ自身も当事者であることが強調された。
 最後に、ロラたちに付き添い通訳を務める澤田さんより、「私たちにできること」として具体的なロラたちへの支援方法が提示された。
 質疑応答の時間には、フロアより多くの質問、コメントがなされた。「慰安婦」と名付けられ呼びかけられることの意味や、留学生の自国での「慰安婦」問題の取り挙げられ方、連帯の意義について質疑応答がなされた。本証言会は、当事者の声を聴くという貴重な機会であったと同時に、戦争犯罪をわれわれ自身の問題として捉え直す重要な契機となった。サバイバーとして、そして今はアドヴォケーターとして来日しお話し下さったディさんに敬意を表したい。

(ジェンダー研究センター研究機関研究員、平野恵子)


《開催詳細》

【日時】2014年6月3日(火)13:20-15:00
【会場】お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科棟6階大会議室
【司会】申琪榮(お茶の水女子大学大学院准教授・ジェンダー研究センター教員)
【証言】エステリータ・ディ
【コメンテーター】 柴崎温子(日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議実行委員会)、レチルダ・エクストレマデュラ(リラ・ピリピナ)
【通訳】澤田公伸(まにら新聞)
【参加者数】47人

【主催】第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議実行委員会
お茶の水女子大学ジェンダー研究センター

《 2014/6/20掲載 》



   エステリータ・ディ氏



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お茶の水女子大学ジェンダー研究センター
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